Ridley Scott x Blade Runner x Vangelis
この作品、音楽はギリシャ出身のシンセサイザーの鬼才、
ヴァンゲリスが担当していました。
公式なサントラ盤がリリースされたのは映画公開から
12年後の1994年。
なぜこれほどのタイムラグがあったのか、理由は定かではないものの(一説によればヴァンゲリス自身がリリースを拒否していた、とか)、その間、ファンはどうしていたのか?
海賊版、というものも存在しましたが、ここではそれには触れないでおきます。
俗に
「スコア盤」と呼ばれる、ファンの欲求を中途半端に埋め合わせる音源が当時は発売されてました。
ヴァンゲリスが作った楽曲を
『ニュー・アメリカン・オーケストラ』なる謎のユニットがカバーした曲が収められたこのアルバム、リリース当時は舐めるように聴き込んだものですが、公式盤が出た今となっては……(笑)
しかしながらこのアルバムも、ヴァンゲリスの前衛的な雰囲気が薄れ、ジャズ・フュージョン風味の増した、ある意味では聴きやすい音ではあるんですが。
もう一つ、ヴァンゲリスのサントラ音源は意外なところにありました。
サントラ中の
「Memories of green」という曲は、実はヴァンゲリスの1980年リリースのオリジナルアルバム
「See You Later(国内盤タイトルは「流氷原」)」に収録されてる既発の曲だったのです。
そこで、ふと妄想。
リドリー・スコット監督は、この曲を使いたいがために、ヴァンゲリスにサントラを依頼したのでは?
それは推測が過ぎるとしても、映画「ブレードランナー」の作中に鳴らすべき音楽の原イメージとして、この「Memories of green」があったのでは?
電子音の錯綜する無機的なサウンドスケープに、
「雨のように、涙のように」ぽつりぽつりと浮かび上がるメランコリックなメロディ。まさに「ブレードランナー」の世界観にふさわしい音、と言えるかもしれません。
この曲を見出したリドリー・スコット監督も慧眼でした。
リドリー・スコットは後に監督したロマンチック・サスペンス
「誰かに見られてる」にも、上記ニュー・アメリカン・オーケストラによるスコア盤に収録されてるバージョンの「Memories of green」をサントラに使用してます。よっぽどこの曲に思い入れがあるのは確かみたいですね。
「1492 コロンブス」(1992)のサントラ製作という形で、リドリー・スコットとヴァンゲリスは再びコンビを組んだわけですが、3度目はあるのでしょうか。期待したいです。
(付記)
2007年、オリジナル版劇場公開25周年を記念して、CG等で映像をリファインした
"BLADE RUNNER : FINAL CUT"がようやく劇場公開&DVD発売されます。
これは本当は
公開20周年時にリリースされるはずだったのですが、オリジナルフィルム素材の権利関係がこじれており、裁判等でそれをクリアにするのに時間を要してしまったらしいです。
また、それに伴い、
Vangelisのオリジナルサントラ盤も復活。
劇中では使用されていたものの
サントラ盤には未収録だった曲や、"FINAL CUT"版のために
新規に作られた曲も収録した
3枚組アルバムとしてリリースされます。
根強いファンがいると言うべきか、商魂たくましいと言うべきか(笑)
<関連資料>
・メイキング・オブ・ブレードランナー
・メイキング・オブ・ブレードランナー(ファイナル・カット)
・「ブレードランナー」論序説
・ブレードランナーの未来世紀