Peter Gabriel @ Movies

ピーター・ガブリエル(最近ゲイブリエルと表記されることも多い)。
ジェネシスのリーダーとしてブリティッシュ・プログレの一時代を伐りひらいた後、バンドを脱退しソロに転向。
エスニックな要素なども取り入れた通好みの音楽を作ってましたが、"Sledgehummer"等を収録したソロ5枚目のアルバムSO(1986)で大ブレイク、いつの間にやらすっかりロックの“大御所”になってしまいました(1994年ウッドストックでトリを努めたのには仰天しました)。
また、この御仁、非常に寡作であるとも言われてます。
確かに「SO」以降、次のアルバム「US」(1992)まで7年弱、その次のアルバム「UP」(2002)までにも9年強を要してます。このペースは、寡作と呼ばれても仕方がないものでしょう。
しかし。
ファンとして、マメにピーター・ガブリエル(以下P.G.と表記)の音を追っかけてきたものとしては、それほどの飢餓感を感じていた記憶もないのですよ。
ナゼかと言えば、P.G.はオリジナルアルバムの合間にも、映画サントラなどでチョコチョコと音源を発表することが多いからです。
本人名義の映画サントラもバーディアラン・パーカー監督)、最後の誘惑マーティン・スコセッシ監督)、裸足の1500マイル…サントラ盤タイトルは"Long Walk Home" … 」(フィリップ・ノイス監督)の3作があります。
(余談ですが、この「最後の誘惑」のサントラ(アルバムタイトルは「Passion」ですが)が1989年、第32回グラミー賞のニューエイジ音楽部門を受賞していることはあまり知られてませんね。)
その他にも、映画のサントラ盤の中に新曲を1曲だけ提供、なんてのが多数あるわけです。それを一望してみよう、というのが今回の趣旨です(前置きが長い)。

では、年代順にいってみましょー。

All This And World War II (1976)

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このアルバムはちょっと丁寧に紹介しておきましょう。今回紹介する中でも、これがたぶん最もレアだと思うので。
20世紀フォックス社が製作した戦争映画のハイライトシーンと第二次大戦のニュース・フィルムとを織り交ぜたドキュメンタリー作品で、「第二次世界大戦」というタイトルで日本でも公開されていたようです。このサントラ盤(LP)も、国内盤がリリースされてました。
アルバムの内容は、全28曲がほぼすべてビートルズのカバー。しかもそれが製作当時(1976年)のロックスターによるもの、という超豪華なもの。
ラインナップは以下の通り。
<SIDE ONE> 
1. Ambrosia / Magical Mystery Tour
2. Elton John / Lucy In The Sky With Diamonds
3. The Bee Gees / Golden Slumbers : Carry That Weight
4. Leo Sayer / I Am The Walrus
5. Bryan Ferry / She's Leaving Home
6. Roy Wood / Lovely Rita
7. Keith Moon / When I'm Sixty-Four
<SIDE TWO>
1. Rod Stewart / Get Back
2. Leo Sayer / Let It Be
3. David Essex / Yesterday
4. Jeff Lynne / With A Little Help My Friends : Nowhere Man
5. Lynsey de Paul / Because
6. The Bee Gees / She Came Through The Bathroom Window
7. Richard Cocciante / Michelle
<SIDE THREE>
1. The Four Seasons / We Can Work It Out
2. Helen Reddy / The Fool On The Hill
3. Frankie Laine / Maxwell's Silver Hammer
4. The Brothers Johnson / Hey Jude
5. Roy Wood / Polythene Pam
6. The Bee Gees / Sun King
7. Status Quo / Getting Better
<SIDE FOUR>
1. Leo Sayer / The Long And Winding Road
2. Henry Gross / Help
3. Peter Gabriel / Strawberry Fields Forever
4. Frankie Valli / A Day In The Life
5. Tina Turner / Come Together
6. Will Malone And Lou Reizner / You Never Give Me Your Money
7. The London Symphony Orchestra / The End

長年CD化が待たれていましたが、現在HIP-O Select.comにてCD版の購入が可能のようです。
P.G.は「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」を唄ってます。

グレムリン Gremlins (1984) DVD

gremlins
言わずと知れたスピルバーグジョー・ダンテ監督によるモンスター・ホラー・ファンタジー(?)。
このサントラに、P.G.は"Out Out"というアップテンポな新曲を提供してます。
(余談。このアルバム、CD再発されてたんですね。知りませんでした。アナログ盤しか持ってない……)

カリブの熱い夜 Against All Odds (1984) DVD

against all odds
P.G.とはジェネシスつながりのフィル・コリンズが唄った主題歌がヒットしたのを覚えている方も多いのでは。
このサントラに、P.G.は"Walk Through The Fire"という新曲を提供。ちなみに、この曲は12インチシングルカットもされてます。それに収録されてるのは、アルバム版とは別のリミックスされたバージョン(実は筆者はこちらだけを所有してたんですが、「CDでも所有しておこう」と中古屋でこのサントラCDを購入。まったく聴き慣れないアレンジの曲が流れてきて驚愕したのはわりと最近のこと(笑))。こういうのがあるからP.G.は油断なりません。
さらに言えば、その12インチシングルにカップリングされてたP.G.の"I Have The Touch"もミックス違いの別バージョン(後のシングルにカップリングされてた"I Have The Touch : '85 Remix"とも別)。いやはや。

夢の涯てまでも Until The End of The World (1991) VHS

until the end of the world
ヴィム・ヴェンダース監督の近未来ロード・ムービー。
U2REMルー・リードなど豪華メンバーがサントラに曲を提供する中、P.G.は "Blood of Eden"(アルバム"US"ではシンニード・オコナーとデュエットしていた曲)のソロバージョンを提供……してるのですが、なぜかサントラ盤には未収録
P.G.の"Blood of Eden"CDシングルにカップリング収録されてはいたのですが。

フィラデルフィア Philadelphia (1993) DVD

philadelphia
トム・ハンクス主演、ジョナサン・デミ監督の社会派ドラマ。
ハリウッド版私を抱いてそしてキスしてとは誰も呼んでませんが(笑)、製作・公開時期が「フィラデルフィア」より「私を抱いて…」の方が先んじていたのは本当の話。
AIDS啓蒙、というテーマはいずれも共通してますが。
P.G.は"Lovetown"という新曲を提供。この曲は"US"ツアーでも唄われることが多かったので、聴き覚えのある方もいらっしゃるでしょう。

ナチュラル・ボーン・キラーズ Natural Born Killers (1994) DVD

natural born killers
クエンティン・タランティーノ脚本、オリバー・ストーン監督による問題作。
このサントラには、P.G.はイスラム歌謡・カッワーリーの大家であるヌスラット・ファテ・アリ・ハーンとの共演作である"Taboo"を提供。
P.G.は自身主宰のリアルワールド・レーベルでこのヌスラット御大のアルバムを何枚も製作している間柄でもあるので、この組み合わせはそれほど意外ではなかったんですが、ヌスラット御大、他にもハリウッド映画のサントラ参加の実績があります。
デッドマン・ウォーキング Dead Man Walkingのサントラには、ヌスラット御大とパール・ジャムエディ・ヴェダーの共演曲が2曲収録。
P.G.とは関係ないですが、これ、名盤です。

バーチュオシティ Virtuosity (1995) DVD

virtuosity
デンゼル・ワシントン主演のSFアクション。
P.G.はWorldbeatersとの共演、という名義で"Party Man"を提供。
この"Worldbeaters"なるユニット、シルベスター・スタローン主演のジャッジ・ドレッドサントラではP.G.とも縁の深いセネガルポップス界のスター、ユッスー・ンドゥールとも共演を果たしてますが、いったい何者?

フェノミナン Phenomenon (1996) DVD

phenomenon
平凡な男だったジョン・トラヴォルタが、神の奇跡か、突然並はずれた天才と化してしまうヒューマン・ドラマ。
エリック・クラプトンが唄った主題歌"Change The World"がヒットしました。
P.G.はこのサントラに"I Have The Touch"を提供。
「オリジナルアルバムに既発の曲だろ」と思った方、ちょっとお待ちを。
このサントラに収録されてるのは、元The Bandロビー・ロバートソンによるリミックス・バージョン。
「カリブの熱い夜」の項でも触れましたが、この曲は(オリジナルアルバム収録版も含めて)いったい何バージョンあるのやら。それもなぜこの曲ばかりが、というのも疑問ですが。

ストレンジ・デイズ Strange Days (1996) DVD

strange days
1999年末を舞台にした近未来(アレ?)サスペンス。
P.G.はエスノ・ハウス系の人気ユニット、ディープ・フォレストとの共作"While The Earth Sleeps"を提供。
この曲で披露している、P.G.の存在感のあるスキャットは、欧米のファンの間では"Gabrieling"(ガブリエってる?)と称されてるそうです(ライブで歌詞を忘れた時にコレでごまかすことがまれにあったりするらしい)。

ジャングル2ジャングル Jungle 2 Jungle (1997) DVD

jungle2jungle
ディズニー製作、ティム・アレン主演のハリウッド映画ですが、オリジナルはフランス映画「僕は、パリに恋をする Un indien dans la ville」(1994)。リメイク作です。
この作品のサントラには、P.G.とユッスー・ンドゥールの共作"Shakin' The Tree"Shaggy リミックスバージョンが収録されてます。
ちなみに、オリジナルのフランス版のサントラには、P.G.主宰のリアルワールドレーベルからもアルバムをリリースしてるウガンダのミュージシャン、ジェフリー・オリヤマがオリジナル曲を提供してます。
南米・インディオ育ちの少年が大都会を訪れての大騒ぎ……というのがこの映画の(オリジナルもリメイクも)キモだと思うんですが、なんでアフリカの音楽を使おうとするんだろう?

シティ・オブ・エンジェル City of Angels (1998) DVD

city of angels
メグ・ライアンニコラス・ケイジ主演のファンタジー・ロマンス。
ヴィム・ヴェンダース監督のベルリン・天使の詩のリメイクでもあります。
P.G.は哀切なバラード曲"I Greave"を提供。同曲は後にアルバム"UP"にも収録されますが、アルバム版は新録の別テイクですね。

ベイブ/都会へ行く Babe : Pig in The City (1998) DVD

babe:pig in the city
子豚のベイブほか、動物たちが人の言葉を喋りながら冒険を繰り広げるファミリームービー。
このサントラで、P.G.はランディ・ニューマン作詞・作曲の"That'll do"を唄ってます。この曲のバックの演奏にはチーフタンズのパディ・モロニーとイギリスのベテランブラスバンド、ブラック・ダイク・ミルズ・バンドが参加してます。

Brimstone (1998)

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これは映画ではなく、アメリカのTVシリーズ
死亡して地獄に堕ちた警官が、悪魔から逃亡した113体の悪霊を捕らえる命を受けて地上に甦り……というホラー・サスペンス系の作品で、そのテーマソングのみP.G.が制作してます。
サントラ盤は存在しないのですが、リアルワールドより出されていたCDマガジン"Realworld Notes"の第7号にこの1分弱のテーマ曲が収録されてます。
(米本国ではこのドラマのDVD化の予定もあるみたいです。)

レッド・プラネット Red Planet (2000) DVD

red planet
火星を舞台にしたSF作。
P.G.は"The Tower That Ate People"を提供。
この曲は、もともとP.G.のアルバム"OVO"に収録されていたもの (この"OVO"というアルバム自体、2000年にロンドン郊外で行われた "The Millenium Show" のサウンドトラックとして作られたものなのですが……)。
ただし、この「レッド・プラネット」サントラには、"The Tower That Ate People"が2曲収録されてます。ノークレジット版と、Steve Osbourneによるリミックスバージョンと。これだけでも注目ものですが、さらに、ノークレジット版の曲も"OVO"収録版とはあきらかにミックス違いの事実上リミックステイク
もう勘弁してください(笑)

ギャング・オブ・ニューヨーク Gangs of New York (2001) DVD

gangs of NY
レオナルド・ディカプリオ主演、マーティン・スコセッシ監督による壮大なアメリカ叙事詩。
P.G.は、アルバム"UP"にも収録の"Signal to Noise"を提供。ただし、ボーカルを排し、ハードなギターソロをフィーチャーした別バージョンです。
このアルバムには、他にもアフロ・ケルト・サウンド・システムシュ・デジョスリン・プーク等、P.G.主宰のREALWORLDレーベル絡みのアーティストの曲が収録されてますね。

ワイルド・ソーンベリーズ・ムービー The Wild Thornberrys Movie (2002)

the wildthonberrys movie
この米国製のアニメ映画、米本国では好評でそこそこヒットしたらしいのですが、日本では劇場公開はされず、レンタルビデオのみリリースされているようです。日本的な感覚からするとキャラがイマイチ可愛くない、というのが致命的だったのでしょうか?
P.G.は新曲"Animal Nation"と、シャギーをフィーチャーした"Shaking The Tree(02 Remix)"の2曲を提供。
後者は「ジャングル2ジャングル」にも収録されてる曲ですが、02 Remixとある通り、ミックス違いの別バージョン

シャル・ウィ・ダンス? Shall We Dance? (2004) DVD

shall we dance?
周防正行監督のShall we ダンス?リチャード・ギア主演でハリウッドリメイク。
P.G.はマグネティック・フィールズ(NY在住のシンガーソングライター・ステフィン・メリットを中心としたユニット)の曲"The Book of Love"をカバーして唄ってます。

ウォーリー WALL-E (2008) DVD

Wall.e
PIXER製作のCG-SFアニメーション「ウォーリー」に、P.G.は新曲"Down To Earth" を提供(サントラ全体はThomas Newmanが制作) 。
また、サントラ中の1曲"EVE"のみ、 P.G.とThomas Newmanの共同作曲ということになってます(P.G.は演奏にはタッチしていないようですが)。
以上、挙げてきた他に、アルバム既発の曲がサントラ盤に採録されたものも含めれば、
ハード・ツー・ホールド (1984)」-VHS-
セイ・エニシング (1989)」-DVD-
エンジェル・ベイビー (1995)」
バニラ・スカイ (2001)」-DVD-
等がありますが、このあたりはタイトルを挙げておくにとどめます。

蛇足ながら、サントラ盤ではないものの、企画オムニバス盤にP.G.が新曲を提供してるものも挙げておきましょうか。

The Glory of Gershwin (1994)

the glory of Gershwin
アメリカを代表する作曲家、ジョージ・ガーシュインの曲をスティングエルトン・ジョンエルヴィス・コステロケイト・ブッシュ等18アーティストがカバーしたアルバム。
P.G.は"Summertime"をカバーしてます。

Tower of Song - the songs of Leonard Cohen - (1995)

tower of song
アルバムのタイトルで分かる通り、レナード・コーエンの曲をビリー・ジョエルボノスザンヌ・ベガら14アーティストがカバーしたトリビュートアルバム。
P.G.は"Suzanne"をカバー。

Diana Princess of Wales Tribute (1997)

Diana Princess of Wales tribute
交通事故で急死したダイアナ妃への追悼の意を込めて、全36曲(うち新曲が13曲)が集められた2枚組アルバム。
P.G.はREALWORLDレーベルからもアルバムをリリースしてる新鋭ロッカー、ジョセフ・アーサーの曲"In the sun"をカバーして提供。
ちなみに、ジョセフ・アーサー本人バージョンの"In the sun"はアルバム"Come to Where I'm From"に収録されてます。P.G.版も名曲ですが、こちらもなかなかです。
 
今度こそ、以上、と言っていいのでしょうか。
きっとまだ今後もラインナップは増えていくんでしょうが、それは随時更新、ということで......

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