MURAKAMI MOVIES
村上龍&
村上春樹といえば、海外でも人気の高い、現代日本文学を代表する作家と言っても過言ではないでしょう。
人気があるだけに、映像化の機会も少なからずあるわけで(特に龍氏は自ら監督を手がけたりもしていますし)、それらを網羅してみることにしましょうか。
◆ まずは
村上龍自身による監督作から。
村上龍氏の
デビュー作&
芥川賞受賞作である「
限りなく透明に近いブルー」を、村上氏
自ら監督を手がけ、映画化。この作品が、
三田村邦彦のデビュー作でもあります。
この作品のサントラは、当時の人気ミュージシャンである
山下達郎や
井上陽水、
カルメン・マキ等が
フォーク・ロック系の洋楽をカバーするという異色の企画盤でもあります。
何年か前に
CD復刻されていたはずですが、それもすでに希少盤になってしまってるようですね。
こちらも村上龍
原案・原作による、
「老いたるスーパーマン」ゴンジー・トロイメライ(演じるは
ピーター・フォンダ)の引き起こす騒動を描いたSFファンタジー。
この作品のサントラには、
加藤和彦や
坂本龍一といった豪華メンバーが参加してます。
これがデビュー作になる
広田レオナがボーカルをとっている曲もあり、今となっては微笑ましいですね。
ラッフルズホテル ('89)
この作品は、村上龍監督作ではあるものの、企画の発端は
奥山和由プロデューサーによるもの。フィリピンの高級リゾートホテル、
ラッフルズホテルの改装による休業期間中の撮影許可を獲得できたことが発端だったらしいです。
脚本の第1稿も、(奥山氏のアイデアを受けて)脚本家の
野沢尚氏が書いたもの。
村上氏は、自分が監督するに当たってその野沢脚本を改稿。
(野沢脚本と村上脚本を併録した「
シナリオ ラッフルズホテル」という本も公開当時、文庫本で刊行されていたのですが、今はもう絶版のようです)
現在、小説版として刊行されている「
ラッフルズホテル 」は映画がほぼ完成した後に書かれた、
映画のノヴェライズ版というべきもの。
これを
「原作」と称して刊行するのはどうかと思いますねぇ。ベースのストーリーを書いた
野沢氏への献辞の類も一切なかったですし。
この映画のサントラは、
小笠原寛が全体の劇伴音楽を作成。他に、
Kuwata Band やイスラエルの歌姫
Ofra Hazaの曲を使っていましたが、サントラ盤としてアルバム化はされなかったようです。
◆ ここからは、村上龍の手になる原作小説を、他の監督が映画化した作品について。
連作短編集
「走れ!タカハシ」を原作にした、
大森一樹監督の作品。
原作では
高橋慶彦をモチーフにしていた部分を
イチローにすげ替えるという荒技(笑)を経て、神戸を舞台にしたハートウォーミングコメディとして映画化。
音楽は
山下康介が担当、主題歌「Stay with me」を
河村隆一が歌ってました。
最後の家族 ('01)
◆
続いて、海外でも非常に評価が高く、最近ではノーベル文学賞まで期待(?)されている
村上春樹。
氏の作品の映像化作、というのはそんなに多くない(作者自身が
映像化に積極的でない、という話もある)のですが、それでも何本か、映画化されたものもあります。
村上春樹の
作家デビュー作を、同郷の神戸出身である
大森一樹が映画化。
小林薫、
真行寺君枝、
巻上公一というキャスティングには賛否両論あるでしょうが、まだ当時は皆さん
若かったので(笑)、大学生という設定にそれほど違和感はありません。ジェイズ・バーのマスター、ジェイ役に
坂田明というのは「ちょっと違う」ような気もしますけど。
音楽は
千野秀一が担当。当時、サントラ盤(LP)はあったのでしょうか? 少なくとも、CD復刻等はされていません。
村上氏の「
中国行きのスロウ・ボート」所収の短編『土の中の彼女の小さな犬』を、「
真夏の少年」「
二人日和」等の
野村恵一監督が長編映画化。
きたやまおさむと
一色彩子が主演。
シーズンオフのリゾートホテルで出会った男女の、
会話による心理ゲームというストーリーをかなり忠実に映像化しています。
音楽は、ピアニストの金久万利子が担当。リストの「マゼッパ(超絶技巧練習曲)」も使われていたと記憶してます。
公開後に
VHSソフトはリリースされていたのですが、DVD化はされていないようです。
短編集「
神の子どもたちはみな踊る
」所収の表題作『神の子どもたちはみな踊る』を、舞台を
ロサンゼルスに置き換え、アメリカで映画化。
日本の小説が
海外で翻案されて映画化されるのは、
小川洋子原作のフランス映画「
薬指の標本」の例もありますが、珍しいのは間違いないでしょうね。
監督は、これが
初監督作となるロバート・ログバル。
ジョアン・チェン(「
天と地
」や「
ツイン・ピークス」に出演してたのも懐かしいですね)や、
ナスターシャ・キンスキーの娘であるソニア・キンスキーが出演してます。
実はこの作品、製作は2007年だったにも関わらず、2010年の日本公開が、初の一般公開でもあるようです(要するに、米本国では
お蔵入り状態だったわけですね)。内容については、そこからも推して知るべし、というところなのでしょうか……。