Directors As Musician
映画と音楽は切っても切れないもの。
ミュージシャンが映画監督に進出する、というのは日本では
桑田佳祐や
小田和正、
辻仁成などの例もありますが、海外ではあまり見かけませんね。
一方、映画監督がミュージシャンとしても活躍している、という例は海外でも色々とありますので、それらを紹介してみましょう。
映画史に残る喜劇王・チャップリンは、監督作の音楽も自ら手がけていました。ただし、チャップリン自身は
楽譜の読み書きはできなかったので、駆け出し時代に
独学で学んだピアノやチェロ、バイオリンなどをつま弾いたり、口ずさんだりしたものを、専属のアレンジャーが採譜していたそうですが。
(左:
チャップリンの映画音楽 )
旧ユーゴスラヴィア出身で、「
パパは、出張中!」「
アンダーグラウンド」で
2度のカンヌ・パルムドールを受賞したベテラン監督ですが、この人にはもう一つの顔……バンド"
No Smoking Orchestra"の
ギタリスト、という顔があります。
この バンドは
ジプシー・バルカン音楽とロックンロールがミックスされた実に個性的なごった煮音楽をやっているのですが(クストリツァ監督の息子がドラマーをやってたりもする)、近作「
黒猫・白猫」や「
ライフ・イズ・ミラクル」ではこのNo Smoking Orchestraがサントラを手がけています。
また、No Smoking Orchestraのツアー・ドキュメンタリー映画「
SUPER 8
」をクストリツァ監督が自ら手がけていたり、映画監督業とバンド活動は渾然一体となってしまってるようですね。
(初期の作品「
ジプシーのとき
」「
アリゾナ・ドリーム」「
アンダーグラウンド」では監督と同郷のユーゴ・サラエボ出身の
ゴラン・ブレゴビッチがサントラを手がけており、これらもバルカン・ジプシー音楽をベースにモダン・アレンジを施した秀逸な音楽です)
アルジェリア出身、
ジプシーとアルジェリア人の間に生まれたガトリフ監督ですが、このガトリフ氏も音楽については一家言持つ人のようです。
「
ラッチョ・ドローム」ではインドから中近東・東欧をへてスペインに繋がるジプシー音楽を一望し、「
ベンゴ」ではフラメンコとモロッコ音楽の相互の影響を見出し、「
僕のスウィング」では
マヌーシュ・スウィングを採り上げ、「
愛より強い旅」ではパリからアルジェへの旅路に合わせてテクノ・フラメンコ・ライ・スーフィー等を縦横無尽に取り入れ、「
トランシルヴァニア」ではルーマニア・トランシルヴァニア地方(ロマ人の文化が古くより根付いている)の伝統音楽を用いています。
そして、そのいずれのサントラでも、伝統音楽をそのまま用いるだけではなく、独自のアレンジを施したり、オリジナルの楽曲を新たに作ったり、とガトリフ監督の
コンポーザー/プロデューサー的な処理を通した音楽が作られていて、実に刺激的なサントラになっています。
日本では、青山真治監督が自作サントラのために自ら音楽を制作していますね(全ての作品ではありませんが)。「
HELPLESS」「
ユリイカ」「
シェイディー・グローヴ」等でギター系のサウンドを披露してます。
青山氏は
高校時代には
ロックバンドを結成していたそうで、その頃の経験が生きているのでしょうか。
他にも探せば見つかりそうな気もしますが、「こんな人もいる!」という情報があればお寄せください。