Bill Laswell & AXIOM Label (part.2)

Part.1で紹介したフリーペーパーは94年に配布されたものだったので、それ以降にリリースされたAXIOMレーベルのタイトルについては当然フォローされていません
Bill Laswell率いるAXIOMレーベルの、94年以降の作品をここでは紹介していきます。

T.A.Z. / Hakim Bey ('94)

T.A.Z. / Hakim Bey
著名な思想家の変名(?)であるらしい謎の作家、ハキム・ベイが85年に刊行した刺激的な著作「T.A.Z.: The Temporary Autonomous Zone, Ontological Anarchy, Poetic Terrorism 」(邦訳は「T.A.Z. : 一時的自律ゾーン 」)。
このテキストは刊行時に著作権放棄され、引用・改変自由なのだそうですが、このCDでは、そのテキストをハキム・ベイ本人が自ら朗読し、そのバックをビル・ラズウェル、ウー・マン(中国琵琶奏者)、ニッキー・スコペリティスバケットヘッドによるアンビエントサウンドで飾る、という異色作。
NYアンダーグラウンドカルチャーの一つの結実。

The Trance of Seven Colors / Maleem Mahmoud Ghania with Pharoah Sanders ('94)

The Trance of Seven Colors / Maleem Mahmoud Ghania with Pharoah Sanders
フリージャズ系の伝説的サックスプレイヤー、ファラオ・サンダースが自らモロッコに赴き、 現地の伝統音楽、グナワの大御所であるマーレム・マフムード・ガニアとガッチリとディープな競演を果たした意欲作。
録音の直前に亡くなったソニー・シャーロックへ捧げられた曲も。

AXIOM Ambient : Lost in The Translation ('94)

AXIOM Ambient
ここまでAXIOMレーベルからリリースされてきた、ジャズ、ファンク、ワールド系といった多岐にわたるジャンルのサウンドにディープなアンビエントミックスを施してコンパイルした2枚組アルバム。
ミックスはビル・ラズウェルを中心に、テーリ・テムリッツThe Orbテツ・イノウエも協力して手がけています。

Altered Beats : Assassin Knowledges of The Remanipulated ('96)

Altered Beats
ヒップホップカルチャーの立役者でもあったビル・ラズウェルが、アンダーグラウンドなアブストラクトDJ達の作り出す斬新なサウンドに注目するのは理の当然。
このアルバムでは、そうしたDJ達の「イルビエント」とも称されることになるトラックをコンパイル。
DJ Rob SwiftDXT (GrandMixer D.ST)Prince PaulDJ KrushInvisible Scratch PicklesNew KingdomVALISSpectre、Materialが参加。

AXIOM Dub : Mysteries of Creation ('96)

 AXIOM Dub
アンビエント・ダブ・テクノ系のトラック(しかも大半がこのアルバムのための新録曲)をコンパイルした2枚組アルバム。
Ninj、Sly & RobbieSub DubThe OrbDJ OliveLoopWordsound I-PowaMad ProfessorAutomatonDub SyndicateJah WobbleTechno AnimalNew KingdomScarabDJ Spooky が参加。

Dreams of Freedom - Ambient Translations of Bob Marley in Dub - ('97)

Dreams of Freedom
伝説的レゲエミュージシャンである、ボブ・マーリィのアンビエント・ダブ・リミックスアルバム。
ただし、ボーカルは全て排され(「ボブ・マーリィのヴォーカルをエディットすることは許されないと思った」とビル・ラズウェル自身がコメントしていたはず)、全曲インストゥルメンタル。ビートを強調する「ダブ」というよりも「アンビエント」色の強いサウンド。

Arc of the Testimony / Arcana ('97)

Ark of The Testimony
トニー・ウィリアムズデレク・ベイリー、ビル・ラズウェルの3者によるユニット "Arcana" のファーストアルバム「The Last Wave 」('96)に続いて、同じく "Arcana" 名義で録音された第2作(参加メンバーはビル・ラズウェル、トニー・ウィリアムズの他はファラオ・サンダース、グレアム・ヘインズバイアード・ランカスター、ニッキー・スコペリティス、バケットヘッド。デレク・ベイリーは今作は不参加)。
しかし、このアルバムの完成直前にトニー・ウィリアムズは急逝。ビル・ラズウェルによる哀悼のメッセージは落涙必至
唯一無二のビートが貫くフリー・ジャズロック。

ここで、状況が変わります。
ここまでアイランド・レコード傘下にあったAXIOMレーベルは、これ以降、アイランドを離れPalm Picturesに移行。
このPalm Picturesは、そもそもAXIOMレーベル設立を支持していた、アイランド・レコード創設者のクリス・ブラックウェルが新たに興したレコード会社。
AXIOMの移行も必然、ということでしょうか。

Intonarumori / Material ('99)

Intonarumori
ビル・ラズウェル入魂のプロジェクト、マテリアルの目下の最新作。
今作ではヒップホップをテーマに据え、Kool Keith & KutMasta KurtFlavor Flav (Public Enemy)、Killah PriestPhonosycographDISKRamm Ell Zee、Extrakd & Eddie Defといったヒップホップ系の豪華メンバーをフィーチャー。
Rap Is Still An Art !

Tala Matrix / Tabla Beat Science ('00)

Tala matrix
ザキール・フセインウスタッド・スルタン・ハーンタルヴィン・シントリロク・グルトゥカーシュ・カーレイといった、ビル・ラズウェルとも縁の深いインド系ミュージシャンを総動員し、ドラムンベース系エレクトロサウンドと超絶テクのタブラ・パーカッションを融合!
まさに神の手が打ち出すトランスミュージック!

RADIOAXIOM - A Dub Transmission / Jah Wobble・Bill Laswell ('01)

RadioAxiom
永年の同志であるジャー・ウォーブルとビル・ラズウェルが久々に組んで作り上げたアンビエント・ダブ・サウンド!
ニルス・ペッター・モルヴェルやグレアム・ヘインズ、ハミッド・ドレイクといったジャズ系の音も、エチオピアの歌姫・ジジ・シババウやカーシュ・カーレイ、アイーブ・ディエンといったワールド系の音も、全てがディープなアンビエントの宇宙に渾然一体と化して融合。
ビル・ラズウェルの最も得意とする、ボーダレス・ジャンルレスの独壇場!

Live in San Francisco at Stern Grove / Tabla Beat Science ('02)

Tabla Beat Science Live
タブラ・ビートとエレクトロサウンドの融合ユニットであるタブラ・ビート・サイエンスが2001年8月にサンフランシスコ・スターン・グローブ・フェスティバルで行った狂熱のライブを、CD2枚組でフル収録!
エチオピアの女性シンガー、Gigiやインド系エレクトロニカユニット Midival PunditzDJ Disk等も参戦して、一触即発、白熱のビートの渦!

Talamanam Sound Clash / Tabla Beat Science ('03) -DVD-

Tabla Beat Science Live DVD
タブラ・ビート・サイエンスの、2002年サンフランシスコ・フィルモアでのライブ(上のライブCD盤とは別のパフォーマンス・注意!)を12台のカメラでとらえた2枚組ライブDVD!
マルチアングル仕様の映像もあり、神業的なタブラ演奏の手元をじっくりと鑑賞することも可能。
ビル・ラズウェルのライブパフォーマンスの映像自体が非常に少ないので、その点でも貴重。

AXIOM : Reconstructions & Vexations ('03)

Reconstruction & Vexations
タブラ・ビート・サイエンスやRADIOAXIOMのトラックを、Carl Craig4 HeroBedouin AscentDr. IsraelKarsh KaleMidival Punditzといった一筋縄でいかないアーティスト達がリミックス・再構築!
異次元のダンス・ミュージック!
現状、AXIOMレーベル名義でリリースされているタイトルは以上。
今後どのような動きがあるのかも未知数ですね(Palm Picturesの公式サイトでも、"AXIOMレーベル" としての括りは設けていないようだし……)

ビル・ラズウェルは、様々なレーベルを並行して運営することもしばしばあります。
2008年初頭には、日本のコロムビア傘下に "NAGUAL" というレーベルを立ち上げ、

Inamorata / Method of Defiance
Profanation Preparation for A Coming Darkness / Praxis
Lodge / Fanu + Bill Laswell

の3作を同時リリースしていますが、この "NAGUAL" もそれ以降は音沙汰ナシ……。

世界を股にかける神出鬼没・貪欲な音の狩人たるビル・ラズウェルがいつ、どこでどんな音を放つのか、注意深くアンテナを張っていきたいものです。

inserted by FC2 system